『チョイ住みinパリ』という番組見ました!001

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3月14日にBSプレミアムでやっていた番組『チョイ住みinパリ』を見た。
すごくおもしろかったので、そのことを第1回目に書こうと思う。

http://www4.nhk.or.jp/P3503/

ぬくもり系男子の“ヌクメン”俳優の千葉雄大さんと『ほぼ日』の編集者・武井義明さんという異色の組み合わせで1週間パリに一緒にチョイっと住む。旅行じゃなくて“チョイ住み”ってコンセプトが楽しいし、パリという街が楽しそうだし、愛称が“シェフ”の武井さんが作る料理は本当に美味しそう。ほんといい番組だった。

この“チョイ住み”のポイントは、まずホテルに泊まらない。AirBnBというネットで探したアパルトマンを借りる。ホテルに泊まるより安いし、しかもかなりおしゃれな物件に泊まれる。で、観光名所には行かない。だって“旅”ではなく“住み”だから。ルーブル美術館にもエッフェル塔にも行かない。じゃあ、何をするかというと、まずは街に出かけてカップとかフォークとか日用品を購入。ホテル泊だと、そういうのまず買わないし、日本に帰ればそれは自分へのお土産にもなる。さらにガイドブックにあるようなお土産屋さんじゃなく、普段使いのモノが買える普通のお店に行く。そこで街の人との出会いもあるかもしれない。雄大さんも言葉は通じなくてもなんかわかりあってた。うん、すごく楽しい。

そして、毎日お店に行って、その季節の食材を買って、キッチンで調理する。街を歩いてどこにどんなお店があるかを憶えて、地図を描き(そこはあまり放送されてなかったけど)、店員さんとお話ししてその日どんなモノを食べるかも決める。それって、その街に住んでいればすごく自然のことだけど、旅だとなかなかやらないこと。それを“旅”ではなく“チョイ住み”と言い換えるだけで、実践できちゃうんだから、“物は言いよう”とはまさにこのこと。

このまずは“言ってみる”って行為はほんと大事だと思う。バラエティ番組でいうと、“タイトル付け”。このタイトルに結局、番組の内容は自動的に引っ張られていくからだ。僕の作ってる番組のタイトルは『オトナの!』。はじめは何気なく付けちゃった“タイトル”だったけど、そのワードに引っ張られてオトナだと感じるゲストを自然とキャスティングするようになるし、出演してくれたゲストの方々も、自然と“オトナ”を意識して会話してくれるようになる。そしてそれがますます“オトナの!”って番組のカラーになっていくわけだ。

この『チョイ住みinパリ』も“チョイ住み”ってタイトルに引っ張られて、物事が進んで行く。二人は“チョイ住み”を意識して活動するし、きっとスタッフも“チョイ住み”を意識して撮影するようになる。なので、面識のない年齢も離れた二人が共同で住むんだから、そこで二人でルールを最初に決めていたし、そこをスタッフも丁寧に描いていた。多分スタッフが事前にアポを取ったりもしていない。それがただの紀行番組とは違う独特の味わいを出しているんだと思う。

武井さんと僕はムーンライダーズファンという“同志”として以前からお知り合い。番組見終わったあと感動してしまって、武井さんに感想をついメールしちゃいました。そうしたら武井さんから「角田さんごらんいただいたんだ、ありがとうございます!」で始まる返信をいただいた。
武井さんのメールによると、番組スタッフがやはり素晴らしくて、そもそも何も起きないかもしれない前提でロケに望んでいたし、事前アポも武井さんがぜひお伺いしたかった有名なお肉屋さん以外は無し。1週間の間ずーっと二人にはりついて撮影、部屋にもカメラ4〜5台。使ってないエピソードのほうが多いくらい、いったい何百時間撮ったんだってくらいの撮影映像らしいのです。

でも、武井さんのメールにある“この使ってない何百時間の撮影映像”の痕跡は番組から実は醸し出ていて、僕には十分に伝わりました。それがこの番組の素晴らしいとこなんだと思う。これを“撮影効率”を気にして、スタッフがアポを事前に取ったり、撮影も要所要所にまとめ撮りとかにしちゃうと、結局出来上がった番組を見ると、その“不自然さ”が自然と出てしまうものなのです。

番組途中で、武井さんは雄大さんに一晩でも“手料理”を作って欲しいと伝えていました。さらに最終日には誰か知り合いになったパリジャンを家に呼んで“ホームパーティーしよう”って話しておりました。通常、番組においてそういう会話=フリがなされたら、普通は、雄大さんが“手料理”に挑戦するシーンが織り込まれるし、最終日には、(もしかしたらスタッフ総出で声かけて)知り合いになったパリジャンを家に呼ぶという“オチ”を描くんだろうけど、この番組にはそれはなかった。というより多分“できなかった”んだと思う。普段手料理などしたことない若い雄大さんにはそれは無茶な話で、悩んだ挙句彼はお店でお惣菜を買ってきて(でもそれがものすごく美味そうで)、二人で盛り付けしておいしく食べていたし、やっぱり数日の“チョイ住み”で家に呼ぶほどの知り合いを作るのはなかなか難しく、最後は二人だけで、でもとても楽しそうにお食事していた。その“自然さ”がこの番組からは、確かにはっきり伝わってきて、それがこの『チョイ住みinパリ』の一番の魅力になっているのです。大した事件が起こらないからおもしろい。それって、ものすごく大事なことなんだと思います。

雄大さんも最初にパリに着いた時には不安そうな顔していたけど、だんだん日に日に顔つきがウキウキ顔になっていくのが十分伝わってきた。きっとそれがこの“使っていない数百時間の撮影映像”のご褒美なんだ。
ほんといい番組!いやあ、最高によかった!僕もチョイっとパリに住みたくなりました!!

ky角田 陽一郎 かくたよういちろう
バラエティプロデューサー/ディレクター/映画監督

いとうせいこう/ユースケ・サンタマリアMCの深夜のTBSトーク番組「オトナの!」プロデューサー
東京大学文学部西洋史学科卒業後、TBSテレビに入社。TVプロデューサー、ディレクターとして「さんまのスーパーからくりTV」「中居正広の金曜日のスマたちへ」「EXILE魂」等、主にバラエティー番組の企画制作のほか、映画「げんげ」監督、ACC CMフェスティバル・インタラクティブ部門審査員、その他多種多様なメディアビジネスをプロデュース。著書「究極の人間関係分析学 カテゴライズド」(クロスメディア・パブリッシング刊)、編著「オトナの!格言」(河出書房新社刊)好評発売中。

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